東京工業大学大学院技術経営専門職学位課程の入学試験に合格しました。ひとつの節目として、進学検討から合格までを振り返りたいと思います。
進学を検討する
最初の着想は、専門実践教育訓練給付制度の教育訓練講座検索システムで東京工業大学を発見したことからでした。キャリアコンサルタント養成講座のオンライン説明会に申し込みましたの記事にあるように、キャリアコンサルタントの国家資格取得を検討することがなければ、専門実践教育訓練給付制度を知ることも、教育訓練講座検索システムで様々な講座を眺めることもなかったので、遭遇は偶然の賜物でした。
実のところ、東工大 MOT については2014年頃から名前だけは知っていたのですが、2014年当時は実際に出願することはありませんでした。いま考えてみれば、大学院で2年間経営を学ぶことに本気になれるだけの社会人経験がなかったこと、学費を捻出することへの踏ん切りがつかなかったことなどが根底にある理由かもしれません。
忘れたまま時が過ぎ、2020年9月頃、教育訓練講座検索システムで目にするという偶然から東工大 MOT への進学を本気で検討することになったのです。正直なところ、専門実践教育訓練給付制度を利用するのであれば、学費の大きいところに活用したいという気持ちが後押ししました。
その頃は、Mikatus 株式会社を退職した直後で、マネージャーとしての社会人経験を得て、今後経営に関与していこうという意志を持っていたため、大学院で2年間経営を学ぶことに本気になれるだけの下地は出来ていました。また、社会人学生として大学院に進学できるだけの金銭的余裕がありつつ、専門実践教育訓練給付制度を活用できるという利点もあることから、進学しない理由はほとんどなくなったとも言えます。
一方、東工大 MOT の入学試験に合格できるのだろうかという不安はありました。また、進学を検討する中、PHC株式会社に入社することを決断していたため、仕事と学業を両立できるのかということも懸念のひとつでした。
そのような不安はありながらも、合格する可能性があるのであれば進学したいという方向に気持ちが振れていたので、東工大 MOT についての情報収集を開始しました。この時点で志望理由や研究計画について具体的なものはなかったので、後述のように出願するときに苦しい思いをすることになります……。
Web で情報収集する
最初は Web で情報収集しました。東京工業大学の Web サイトは当然のこと、数は多くないながらも東工大 MOT 在学生のブログや東工大 MOT について説明した予備校の記事がありました。試験対策も然ることながら、入学後の講義やプロジェクトレポートの雰囲気を感じることができてよかったです。
以下、参考にさせていただいた Web サイトをコメントと共に掲載します。
MOT 協議会
最初に紹介する Web サイトは「MOT 協議会」です。「MBA ではなく MOT なのか?」「経営管理修士(専門職)ではなく技術経営修士(専門職)なのか?」ということを考え、MOT について理解を深める上でも参照すべき Web サイトです。
また、MOT 協議会は MOT 教育コア・カリキュラムを策定しています。MOT 専門職大学院で行われる教育を理解するためにも、コア・カリキュラムは一度目を通しておきましょう。なお、東京工業大学以外にも MOT を学べる大学院(MOT 協議会大学院)があるので、自分にあった大学院を選択する上でも参考になると思います。
大学院で学びたい方 | 東京工業大学
東京工業大学の大学院で学びたい方に向けた Web サイトです。募集要項など入試に関連する公式情報は、大学院課程ごとの Web サイトではなく、こちらの Web サイトにある大学院課程入学案内で確認します。説明会やオープンキャンパス、新着の入試情報などが掲載されますので、情報がどこにあるかがわかる程度には全体に目を通しておくとよいと思います。
東京工業大学 環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程 / イノベーション科学系
東京工業大学大学院技術経営専門職学位課程の Web サイトです。こちらの Web サイトから研究室の Web サイトを確認することができます。志望指導教員を出願時点で記載する必要があるので、研究室の一覧を眺めながら熟考することになると思います。
誤解を恐れずに言えば、この Web サイトからリンクされている研究室の Web サイトを閲覧するだけでは、自分のやりたいプロジェクトや興味のあるプロジェクトをその研究室で研究できるのかわかりづらいと思います。研究内容をより深く知るには、オープンハウスや入試説明会に参加し、先生に直接質問することをお勧めします。また、有償の講座ではありますが、「MOT を知る特別講座」で各先生の研究内容を俯瞰することもお勧めです。
MOT頑張りましょう~★ ~東工大MOT(技術経営)生活~
東工大 MOT の入試から入学、学生生活までを軽妙な語り口の日記でまとめているブログです。自分が入学した後の学生生活を想像するためにも一通り読んでみるといいと思います。「オープンハウス」「入試説明会」「MOT を知る特別講座」「CUMOT」「専門実践教育訓練給付制度」などのトピックが一通り網羅されている重要な情報源でもあります。
MBA/MOT | the Biztech blog
東工大 MOT を修了された方のブログです。「MBA/MOT」カテゴリのトップにリンクしています。
東工大技術経営 (MOT) 入試完全ガイドでは、「MOT とは何か」「大学院選び」「入試説明会」「願書出願」「入学試験」について網羅的に解説されています。具体的にどのような入試対策を行ったかはとても参考になると思います。
また、東工大MOTの特色と学内の雰囲気、在籍者の所属企業などについて卒業生が説明しますでは、入試状況や学生数、業界、年齢など独自調査も含めて説明されています。定性的にもどのような学生がいらっしゃるかを説明されており、その点でも興味深い内容です。
国内MBA試験の通信講座・予備校/スクール|アガルートアカデミー
国内 MBA 予備校アガルートアカデミーの Web サイトです。結果的に私は予備校に通うことなく合格できましたが、アガルートアカデミーのブログはかなり参考にさせていただきました。
飯野一講師の特別コラムは、社会人として今後のキャリアを考える上で、なぜ東工大 MOT に行くのかに思いを巡らせるきっかけになりました。国内 MBA 全般についての記事なので、大学院選びをする段階で目を通しておきたい記事だと思います。
また、MBAとMOTの違いとは?基本知識と判断基準をわかりやすく紹介や東京工業大学MOT【入試対策】も参考になります。国内 MBA を目指されるのであれば、他にも有意義な記事がたくさんあるので、ぜひ Web サイト内を散策してみてください。
オープンハウスと社会人入試説明会に参加する
Web で情報収集しながらも、実際の研究内容や入試情報を得るために、オープンハウスや社会人入試説明会に参加しました。
MOT オープンハウス
半年毎に MOT オープンハウスというものが開催されます。研究発表と教員や在学生との面談という構成になっています。
私も技術経営の研究領域を理解するために参加し、面談では笹原先生とお話させていただきました。正直、この時点では「社会科学の領域で研究するとはどういうことか?」ということを全然理解できていなかったのだなと今振り返ってみると思います。まあ、現在でも十分に理解できているわけではないですが、少なくとも当時よりは理解が深くなっているはずです。
社会人入試説明会
オープンハウスと同月に社会人入試説明会が開催されます。説明会の大部分は東工大 環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程 / イノベーション科学系 大学院説明会2021のような動画での説明と重複します。一方で、実際に質問でき、オープンハウスと同様に教員や在学生と面談の機会があるので出願を検討している人は参加してみることをお勧めします。
私も入試の詳細を理解するために社会人入試説明会に参加し、面談では杉原先生とお話しました。こういう機会を通じて段階的に東工大 MOT への理解を深めていったのだなと振り返ってみて思います。
社会人入試を受験する
東工大 MOT への理解は浅薄だったものの2021年4月入学の社会人入試を受験しました。
2021年4月入学社会人入試の募集要項は Web サイトで確認できますが、社会人入試では冊子版の募集要項を入手することが必須となっています。私は大岡山キャンパスの入試課を訪問して募集要項を受け取りました。
その後、募集要項を熟読し、「学部の成績証明書」「学部の卒業証明書」など必要書類を取り寄せました。必要書類は募集要項を鉛筆でチェックしながら、作業として淡々とやってしまうといいかなと思います。
本稿を読んでいる方が気になるのは「外部英語テストのスコアシート」と「志望理由書」だと思いますので、この2点については詳細に書いておきます。
まず、「外部英語テストのスコアシート」について、私は920点の TOEIC L&R スコアシートを提出しました。選抜方法において、英語試験(外部英語テストのスコアシート提出)がどの程度の重み付けになっているかは明らかにされていません。受験において英語学習は必要ですが、短期的なスコアアップは難しいかと思いますので、受験だけを見据えず継続的に学習するとよいのではないでしょうか。
つぎに、「志望理由書」について、「なぜ本課程で学びたいか」「これまでに行った誇らしいと思う事柄」「関心ある学習・研究テーマとその動機」をそれぞれ500字程度で記述したものを提出しました。(これは、2021年4月入学の社会人入試以前の項目となっており、2021年9月入学・2022年4月入学の一般入試以降は異なるので注意してください。)内容は割愛しますが、それぞれの項目の関連性や一貫性が弱く、研究計画に相当する「関心ある学習・研究テーマとその動機」が東工大 MOT で研究するのに妥当ではなかったかなと反省するところです。志望理由書の書き方について書かれた書籍を参考にもしましたが、東工大 MOT の志望理由書にうまく構成を反映できるだけ考えきれなかったことも原因のひとつかなと思います。
「志望理由書」の完成度に疑念が残る中、必要書類をまとめて郵送で提出しました。なお、これらの出願書類が受理されたのち、受験票は郵送で自宅に届きます。
募集要項に記載があるとおり、2021年4月入学の社会人入試は COVID-19 の影響で筆答試験がなく、Zoom を用いた遠隔からの口述学力検査と口頭試問でした。試験内容は口外できないことになっているので本稿では説明できません。
そして、合格発表日、合格者一覧の中に自分の受験番号がないことに愕然とします。「試行回数は多い方が試験内容にも慣れて、対策も立てやすくなるからいいよね」という駄目元の気持ちで受験したものの、やはり不合格になったのは衝撃的で、1〜2時間くらいは「あー、落ちちゃったなぁ……」という気持ちでした。まあ、合格の水準はそんなに甘くないということが、今振り返ってみると理解できますね。
蛇足ですが、大学院説明会2021の入試状況にあるように、募集人員15名のところに志願者数61名で合格者数18名だったので倍率は約3.4倍でした。例年、倍率は2倍前後なので、相対的に狭き門となった入試でもありました。正直、COVID-19 の影響で志願者数は少なくなるのではないかと予想していたのですが結果として志願者数は増えているようです。東工大 MOT だけではなく国内 MBA 全体にも言えることのようで、ダイヤモンド・オンラインの慶應、一橋…ビジネススクールの後悔しない選び方、社会人MBA志望者が急増!予備校受講が2倍という記事で言及されています。
なぜ東工大 MOT に進学するのかを再考する
東工大 MOT の入試で不合格になったことによって進学理由を深耕することになりました。想定以上の倍率だったことからも、このまま漫然と受験し続けても合格しないだろう感じたからです。
「なぜ東工大 MOT に進学するのか?」と考える中で、やはり経営管理 (MBA) ではなく技術経営 (MOT) であることが私にとって重要なのだろうという結論に至りました。エンジニアとして仕事をしてきて、CTO や VP of Engineering を経験したことからも、「技術を活かした経営」に貢献する立場でありたいと思うからです。
また、起業して経営者になることや、CTO として経営に関与すること、技術顧問として企業を支援することなどは今後のキャリアにおいて発生する可能性が大きいです。大学院で MOT を修めることは、そのような状況において真価を発揮するであろうという期待もあります。
一方、現職において技術責任者としてだけではなく、将来的には事業責任者としてビジネスにより深く関与していきたいという想いもあったので、MOT の中で経営管理のエッセンスを学べることには価値があります。
そして、「なぜ東工大なのか?」と考えると、修士論文に代わるプロジェクトレポートという成果を出すための研究に重きが置かれていることが東工大を選択する意義であると思いました。
事業開発におけるリーンスタートアップなどを鑑みても、「問題をどのように解決するか (How)」という観点よりは、「何の問題を解決すべきか (What)」という観点が重要になってきていると感じます。研究するとなると適切なリサーチ・クエスチョンと仮説を設定する必要があるので、大学院で研究するということは「何の問題を解決すべきか (What)」を見出す能力を磨く上で有意義でしょう。
また、博士課程に進学できる水準の研究能力を身に付け、プロジェクトレポートという形で研究成果を残したいと考えています。これは、情報科学研究科の修士課程に在籍していたときにきちんと研究できていなかったという反省にも起因しています。
このように、進学理由をいろいろと再考した上で東工大 MOT に再挑戦する意志を固め、試験対策を開始しました。
志望理由書の内容を検討する
まずは、納得できる水準ではなかった志望理由書に向き合うために、『国内 MBA 受験のための研究計画書の書き方』を参考にして、志望理由書の内容について検討しました。
本の「研究計画書作成の基本プロセス」という節に下記の手順が示されています。この手順を往復することで研究計画書を精錬することが示されています。
- 業務(現場)の棚卸し
- 業務内容と実績の整理
- 実務上の課題(問題意識)の抽出
- キャリアゴールの設定
- 中・長期的ゴールの設定
- ビジネススクールが果たす役割(志望動機)
- 研究テーマの設定
- リサーチ・クエスチョンの設定
- リサーチ・デザインの構築(仮説・検証方法)
- 執筆
- 志望校が求める出願書類の把握
- 参照文献のリスト化
大学院で学びたい研究能力の一端がすでに求められていることを感じざるを得ないのですが、これも能力向上の一環だと考えて取り組みました。
東工大 MOT の志望理由書に立ち返ってみると、「なぜ本課程で学びたいか」「これまでに行った誇らしいと思う事柄」「関心ある学習・研究テーマとその動機」という3項目があります。これが上記のプロセスにおける項目と関連しているわけです。
「なぜ本課程で学びたいか」は、「キャリアゴールの設定」に関連しています。業務内容 (As-Is) とキャリアゴール (To-Be) を説明し、そのギャップを埋めるのが東工大 MOT ですよという志望動機が含まれるのだなと理解しました。
「これまでに行った誇らしいと思う事柄」は、「業務(現場)の棚卸し」に関連しています。これまでの業務における実績を示すことで、業務内容 (As-Is) を補強するのだなと理解しました。
「関心ある学習・研究テーマとその動機」は、「研究テーマの設定」に関連しています。実務上の課題からリサーチ・クエスチョンの設定へつながるのだなと理解しました。
ここまで整理してみると、「キャリアゴールの設定」は前節「なぜ東工大 MOT に進学するのかを再考する」からある程度明らかになっており、「業務(現場)の棚卸し」も過去の実績を棚卸しして適切なものを記述するしかありません。一方、「研究テーマの設定」はそこまで考えきれていないことがわかってきました。とくに、興味関心のある領域は多々あるものの、それがプロジェクトレポートを書けるような研究テーマになるのかということがわかりませんでした。
当然、私が興味のある領域と先生方の研究領域が重なっているところを研究テーマとして設定することが理想的です。しかし、各研究室の Web サイトを読み、研究領域を論文などを通じて理解し、私が興味のあることを研究できるか判断するのは、限られた時間の中では困難でした。
そこで、各先生が普通の人にも理解しやすい形で研究内容を説明している日経ビジネススクール「MOT を知る特別講座 2021」を受講することで、研究テーマの設定に役立てようと考えました。
また、東工大 MOT への入学が叶わなかったとしても技術経営への理解を深めたかったので、東京工業大学大学院 キャリアップ MOT (CUMOT) への願書も提出しました。よくあるご質問にあった下記の質問からも課程進学を目指す上で有意義と考えられたというのもあります。
Q. 将来的に「環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程」を希望した場合、 CUMOTプログラムを受講すると推薦枠のようなものがあるのでしょうか。
A. CUMOT修了生に対する技術経営専門職学位課程入試推薦枠などの特別待遇はありません。 ただ、入試はMOTに関する小論文と面接が中心ですので、 修了生は、他の受験生よりも受験準備が整っていることになります。従って、その点で有利になると言えるかと思います。
CUMOT よくあるご質問
MOT を知る特別講座と CUMOT を受講する
技術経営と研究領域への理解を深めるために受講した講座について紹介しておきます。
日経ビジネススクール「MOT を知る特別講座 2021」
「MOT を知る特別講座」は、実務に技術経営のエッセンスを活かしたいビジネスパーソンには価値のある講座だと思います。そして、講義を担当する先生は全員東工大 MOT の指導教員になるため、各先生の研究領域を一般向けに噛み砕いた形で理解することができると考えると進学希望者にとっても有意義です。
私は予定がなければオンライン配信をできるだけ視聴するようにしました。その上で、自分の研究テーマと関連しそうな講義については、録画配信を再度視聴して重要な箇所についてメモを取るようにしました。録画配信があるおかげで、仕事が終わって朦朧としている頭で聞いてよくわからなかったところを後から復習できました。オンライン配信時に読み切れなかったスライドや飛ばし気味だったスライドも拾えるので、期限付きとは言え、すべての講義について録画配信が提供されているのはかなり便利でした。
後述する CUMOT に比べ、各先生の講義は1回だけなので、研究領域の概論かあるトピックに終始することにはなってしまいます。短時間で広く浅く知ることができますが、研究テーマを設定するとなると情報が不足していることは否めません。とは言え、何も知らないよりは、研究室訪問などしやすいと思いますので、最初の取っ掛かりとしてとてもお勧めできる講座です。
東京工業大学大学院 キャリアップ MOT (CUMOT)
「キャリアアップ MOT (CUMOT)」は、社会人の方が働きながら MOT の学びを通じて、キャリア形成を図ることを支援する取り組みです。技術経営専門職学位課程が実施主体となっている社会人アカデミーで、修了すると「学位」ではなく「修了証書」が交付されます。特徴的なのは、受講するために志望理由書を含む願書を提出する必要があり、キャンセル待ちが出るほどの人気プログラムとなっています。
私は社会人入試が不合格になった後、現職の上司に推薦文を書いてもらい願書を提出することで、CUMOT を受講することができました。CUMOT は、ほぼ毎週水曜日の夜に講義があり、課題はグループで取り組むものが中心になっています。
「MOT を知る特別講座」と異なり、東工大 MOT の指導教員である先生が担当している講義は半分に満たないのですが、各先生の講義は3〜4回あるのでより深く研究領域を理解することができます。また、「ビジネスシミュレーション」「ファイナンス&アカウンティング」「知的財産戦略マネジメント」など実務志向の講義を第一線の講師が担当してくださるので、ビジネスパーソンとしての学びが多いと感じます。
本稿を書いている現在も受講中で、講義は全般的に楽しいです。また、受講者の業界が多岐に渡っており、ほぼ IT 業界だけで生きてきた自分の視野の狭さに気付かされたことも有益でした。COVID-19 の影響でオンラインでのコミュニケーションにはなりますが、人脈形成という観点でも価値があると思います。
そして、CUMOT を通じて、仕事をしながら学ぶという雰囲気を感じることができます。学位課程ほど忙しくはないのでしょうが、講義を受講し、参考文献を読み、グループ課題のために講義とは別に MTG を開催することもあるため、社会人学生の気分を味わえます。
また、CUMOT を受講した上で、さらに技術経営の学びを深めたくなり、学位課程に進学される方は一定数いらっしゃるそうです。進学を考えられている方は CUMOT を受講してみることをお勧めします。
一般入試の受験を決意する
「MOT を知る特別講義」を受講している頃、一般入試を受験することを決意しました。CUMOT の受講期間序盤で、本課程に進学したいというのはどうかなと思ったのですが、下記に示すいくつかの理由から受験することにしました。
1つ目の理由は、受験の試行回数を増やすためです。過去の受験者数にはばらつきがあり、おそらく合格ラインも前後しているので、連続で挑戦してみた方が合格する可能性は上がると考えました。
2つ目の理由は、試験を経験して慣れるためです。筆答試験にせよ口頭試問にせよ試験を経験することで傾向を掴むことができます。筆答試験は過去問題が公開されているものの、口頭試問でどのような質問がされるかは受験してみないとわかりません。口頭試問で質問されたことに回答できるよう志望理由書を洗練させる端緒にもなります。
3つ目の理由は、合格に不足している点を明確にするためです。社会人入試と違い、一般入試では筆答試験の受験後に口頭試問受験資格者が発表されます。つまり、筆答試験が一次試験となっており、口頭試問が二次試験となっています。一次試験で不合格となった場合と二次試験で不合格になった場合では、合格に不足している点が異なってくるので、それを明らかにできれば社会人入試に向けて対策することができます。
オープンハウスと一般入試説明会に参加する
一般入試の受験に向けてオープンハウスと一般入試説明会に参加しました。
MOT オープンハウス
2回目のオープンハウスへの参加になりました。オープンハウスの内容はすでに説明しているとおりです。
教員や在学生との面談では、辻本先生とお話させていただきました。エコシステム論が業務と関連しそうだと思ったからです。かなり具体的に質問することができ、半年前よりは深く考えて、研究テーマに近付いているという実感を得ました。その後、時間があったので、在学生の方とも少しお話させていただきました。
一般入試説明会
一般入試説明会に参加しました。内容は社会人入試説明会と大差ないです。
教員や在学生との面談では、在学生の方とお話させていただきました。どのように試験対策をしたか、参考にした書籍はあるか、研究計画はどの程度具体的にしたか、○○業界であればどの先生の研究が関連しそうか、指導教員はどのように決めたか、入学してから研究テーマを変更したかなど様々伺わせていただきました。
振り返ってみると、試験対策という観点での収穫は在学生との面談が一番大きいです。なので、最初に参加するオープンハウスや入試説明会では在学生と面談することをお勧めします。その上で、研究テーマを検討するために、個別に先生と面談するというのがよいのではないでしょうか。
一般入試を受験する
このような経緯で東工大 MOT への理解を深め、2021年9月入学・2022年4月入学の一般入試を受験しました。
2021年9月入学・2022年4月入学一般入試の募集要項は Web サイトで確認できます。社会人入試とは違い冊子版の募集要項はなく、出願書類の郵送以外はインターネット上で完結します。
募集要項公開後、内容を熟読し、出願準備を進めました。社会人入試と手順が違うところも多々あるので、きちんと募集要項を読むことをお勧めします。後述するように、2021年9月入学・2022年4月入学の一般入試では「志望理由書のテーマ等」が変更になっています。
また、受験生にはメールで連絡がありましたが、募集要項の記載とは異なり、2021年9月入学・2022年4月入学の一般入試は COVID-19 の影響で筆答試験が中止になりました。詳細は2021年度 技術経営専門職学位課程入学試験のB日程試験についてという案内に記載されています。
さて、本稿を読んでいる方が気になるのは「外部英語テストのスコアシート」と「志望理由書」だと思いますので、改めてこの2点について言及しておきます。
まず、「外部英語テストのスコアシート」について、前回と同じ920点の TOEIC L&R スコアシートを提出しました。そのため、少なくとも私の場合は英語が合否を分けたということにはならなそうです。
つぎに、「志望理由書」について、募集要項の「志望理由書のテーマ等」にあるように、「1. なぜ本課程で学びたいか(500字程度)」「2. これまでに業務上、学術上行ったことで特筆すべき業績について(500字程度)」「3. 本課程で予定している研究の計画(目的・内容等)について(1,500字程度)」を記述したものを提出しました。志望理由書のテーマが2021年4月入学の社会人入試から変更になっています。本稿の「志望理由書の内容を検討する」で検討した方針はそのまま適用できるものの、より研究計画書を意識した内容になっていると感じました。
とくに、「3. 本課程で予定している研究の計画(目的・内容等)について(1,500字程度)」が重要になってくると考え、『国内 MBA 受験のための研究計画書の書き方』にある「(狭義の)研究計画書型」を参考に構成を整理しました。最終的に「研究テーマ」「背景」「問題意識」「研究目的」「研究方法」「研究計画」「参考文献」という構成で記述しましたが、今振り返ってみると「タイトル」「問題意識」「研究目的」「研究方法」「研究計画」「参考文献」という構成で十分な気がします。
各項目を簡単に説明します。「研究テーマ」には研究のタイトルを記述しました。「背景」と「問題意識」には実務上の課題から生まれた問題意識とその背景を記述しました。「研究目的」にはリサーチ・クエスチョンと研究の意義を記述しました。「研究方法」には「MOT を知る特別講座」や CUMOT で学習した分析方法に基づく研究方法を記述しました。「研究計画」には具体的な講義の履修計画や調査対象者をどのように確保するかについて記述しました。「参考文献」には本文に出てきた数値や手法の引用元を記述しました。
書籍に登場する「(狭義の)研究計画書型」の合格例に比較すると文字数も少ないためだいぶ簡易にはなりましたが、研究計画書であることを意識した文章を心掛けました。とくに、研究計画書のために自分で調査するなど研究の一歩を踏み出していることを示すよう努力しています。一方、研究能力を身に付けることが進学理由でもありますので、「研究計画」の項目においては研究能力を身に付ける段階を含めるようにしました。
このような構成で記述した内容を募集要項で指定されている志望理由書の様式に記述しました。両面印刷の A4 用紙に合計2,500字程度を詰め込むというのが意外と大変で、フォントを小さくしたり、行数を増やしたりしながら、両面印刷の A4 用紙に納まるように調整しました。独立した行に「研究目的」などの見出しを記載することが難しかったので、「研究目的 本研究の目的は……」というように見出しの直後を空けて本文を書き始めるようにしました。見出しはゴシック体太字にして、本文は明朝体というように、試験官が読み易いよう体裁も整えました。「参考文献」も独立して確保することが難しかったので、数値や手法に注釈を付与するという方法で引用元となる参考文献を明記しました。
このように十分な時間をかけて作成した「志望理由書」と共に必要書類をまとめ郵送で提出しました。社会人入試と違い、受験票は郵送で届かず、インターネット出願サイト上から印刷する必要があることには注意してください。
前述のとおり、COVID-19 の影響で筆答試験が中止になったため、出願書類を元に採点され、技術経営専門職学位課程 2022年4月及び2021年9月入学 口頭試問受験資格者発表についてにあるように、口頭試問受験資格者がメールにて通知されました。
無事に口頭試問受験資格者となり、その後口頭試問を受験しました。社会人入試と同様に、試験内容は口外できないことになっているので本稿では説明できません。
そして、合格発表日、インターネット出願サイトのマイページに合格の表記があること、合格者受験番号に自分の受験番号があることを確認しました。また、数日後には合格通知書も自宅に郵送されてきました。今回の受験は時間をかけて準備したこともあり、合格通知書を受け取ったときには、久しぶりに感じる独特の嬉しさが込み上げてきたことを覚えています。
本稿では、およそ1年間に渡る東京工業大学大学院技術経営専門職学位課程への進学検討から合格までを振り返りました。東工大 MOT への進学を検討されている方の参考になれば幸いです。